株式会社Scalar、ScalarDB 3.17 をリリース。既存データベースをスキーマ変更「ゼロ」で導入可能にする新機構を実装〜TiDB・AlloyDB・S3など対応データベースは25種へ。Red Hat OpenShiftにも正式対応〜
- Akihiro Katoh
- 8 時間前
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株式会社Scalar(本社:東京都新宿区、代表取締役CEO:深津航、代表取締役CTO:山田浩之)は、複数・異種のデータベースを仮想的に統合し、トランザクション処理と分析処理を両立するUniversal HTAPエンジン「ScalarDB」の最新版となるバージョン3.17をリリースしました。
本バージョンでは、アプリケーションデータとScalarDBが利用するメタデータ(トランザクションメタデータ)を分離して管理できる新機構を導入し、既存データベースのスキーマを変更することなくScalarDBを利用できるようになりました。これにより、既存システム資産を維持したまま、ScalarDBをベースとしたアプリケーションへの移行をスムーズに進めることが可能になります。さらに、対応データベースとしてNewSQL製品(TiDB、AlloyDB)に加え、主要クラウドのオブジェクトストレージ(Amazon S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage)を新たにサポートしました。これにより、異種データベースやクラウド環境を横断した一貫したデータ管理・処理が可能となり、企業のデータ基盤運用の複雑性を大幅に低減します。
新バージョンリリースの背景
生成AIの急速な普及により、企業のデータ活用は新たな段階に入っています。AIが価値を生み出すためには、社内に分散したデータを迅速かつ正確に活用できる基盤が不可欠です。しかし、長年にわたり構築されてきた基幹システムの刷新には、以下のような課題が存在します。
既存システム改修の「高い壁」:従来の技術では、トランザクション管理のために既存データベースの構造変更(スキーマ変更等)が避けられませんでした。これに伴うデータのマイグレーションやアプリケーション改修、およびテスト工数の増加が、モダナイゼーションプロジェクトの長期化・高コスト化を招いていました。
サイロ化されたデータベース:部門やシステムごとに異なるデータベースが導入された結果、データが分散し、データベース間での整合性確保が困難になっています。マルチクラウド・ハイブリッドクラウド環境への移行が進むなか、異種データベース間でトランザクションの一貫性を担保する仕組みへのニーズが高まっています。
多様化する運用環境:特に金融・社会インフラ等の領域では、厳格なセキュリティ要件やオンプレミス運用への対応が求められる一方で、クラウドネイティブな技術基盤の活用も進んでいます。
ScalarDB 3.17は、これらの課題に対応すべく、既存システムへの非侵襲的な導入を可能にする新機構、対応データソースの拡充、およびエンタープライズ向けコンテナ基盤への対応を実装しました。
ScalarDB 3.17の新機能概要
トランザクションメタデータの分離機構の導入
本バージョンにおける最大の機能強化として、トランザクションメタデータの分離機構を実装しました。従来のScalarDBでは、複数・異種のデータベースを跨るトランザクション処理を実現するため、アプリケーション側のレコードにトランザクション管理用メタデータ(トランザクションメタデータ)を付与する必要がありました。そのため、既存データベースのスキーマ変更が避けられず、既存アプリケーションからScalarDBベースのアプリケーションへ移行する際の大きな障壁となっていました。
ScalarDB 3.17では、トランザクションメタデータを分離して管理する新機構を導入しました。これにより、メタデータを既存データとは独立した領域(同一データベース内の別テーブル等)に配置でき、既存データベースのスキーマを変更することなくScalarDBを利用可能となりました。既存システム資産を活かした段階的なデータベース移行・モダナイゼーションが容易となり、移行コストと移行リスクを大幅に削減できます。
対応データベースの拡充(TiDB、AlloyDB、Amazon S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage)
本バージョンでは、以下のデータベースを新たにサポートしました。
NewSQL:TiDB、AlloyDB
オブジェクトストレージ:Amazon S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage
これにより、ScalarDBがサポートするデータソースは計25種類となりました。RDB(Oracle、PostgreSQL、MySQL等)、NoSQL(DynamoDB、Cassandra、Cosmos DB等)、NewSQL、オブジェクトストレージ、ベクトルストアを網羅することで、特定のベンダーに依存しないデータ基盤アーキテクチャを実現できます。
オブジェクトストレージへの対応により、例えば、OLTPデータベース上のトランザクションデータとオブジェクトストレージ上の履歴データを、ScalarDBを通じて一貫性を保ちながら操作することが可能となります。
Red Hat OpenShift への対応
従来のScalarDBは、主に主要クラウド環境におけるKubernetes上でのデプロイをサポートしていました。本バージョンでは、新たにRed Hat OpenShift上での動作を正式にサポートし、オンプレミス環境や厳格なセキュリティ要件を持つ環境でもScalarDBをご利用いただけるようになりました。これにより、クラウドとオンプレミスを横断したハイブリッドクラウド構成が容易となり、インフラ戦略・セキュリティ要件に応じた柔軟で統一的なデータ基盤の展開が可能になります。
ScalarDB 3.17の既存機能の強化
RBAC(Role-based Access Control)の追加
本バージョンでは、従来のユーザーレベルでのアクセス管理に加え、ロールレベルでのアクセス管理が可能となりました。複数のデータベースにまたがる環境でも、ScalarDB上で一元的にロール定義とアクセス管理を行うことができます。これにより、運用時の権限管理を大幅に簡素化し、ガバナンス強化と運用コストの削減を同時に実現できます。
ネットワーク往復回数の削減による高速化
従来は、各オペレーションごとにアプリケーションとScalarDB間でネットワーク通信が行われていたため、複数オペレーションを含むトランザクションにおいてはレイテンシが性能に与える影響が大きい場合がありました。今回、複数オペレーションをまとめて送信できる「バッチ機能」を追加するとともに、トランザクションのBEGINやCOMMITを他のオペレーションに相乗りさせる「ピギーバック機能」を追加しました。これにより、ネットワーク往復回数を大幅に削減し、複雑なワークロードにおいても安定した高性能を発揮するトランザクション処理基盤を実現します。
SQLにおけるAggregation(GROUP BY)の追加
本バージョンでは、トランザクション処理を担うScalarDB Cluster内のSQLエンジンにおいて、集約処理(GROUP BY)を新たにサポート*しました。これにより、集約ロジックをアプリケーション側に実装する必要がなくなり、クライアント側の処理負荷を軽減できます。また、集約処理をScalarDB側で一貫して実行できるようになることで、アプリケーション開発のシンプル化と保守性向上が期待できます。
*分析コンポーネントである ScalarDB Analytics は従来よりANSI SQLに準拠しており、GROUP BY を含む高度な分析処理が可能です。
開発責任者コメント(代表取締役CTO 山田浩之)
ScalarDB 3.17 はマイナーバージョンアップグレードではあるものの、データベース非依存のトランザクション管理を実現するというScalarDBの根幹において大きなブレークスルーを達成しています。従来のアーキテクチャでは、トランザクション管理用のメタデータをアプリケーションデータと同一のテーブル空間に配置する必要があり、この制約が既存システムからの移行や柔軟なアーキテクチャ設計に制限を与えていました。今回のバージョン3.17では、トランザクションメタデータを分離して管理できる新機構を導入し、このアーキテクチャ上の制約を解消しています。本機構は単なる分離ではなく、バージョン3.16で導入した“下位データベースへの積極的なプッシュダウン(処理移譲)“を高度に組み合わせることで、性能劣化を大きく伴わない形で実現しています。これは、ScalarDBが掲げる「既存データベースの価値を最大限に活用しながら、トランザクション処理の一貫性を保証する」という設計思想をさらに前進させるものです。 今後もScalarDBは、データベースの種類や実行環境に依存しないユニバーサルなHTAP基盤として、より多様なシステムに貢献していきます。
今後の展望
今後は、より幅広いユースケースへの対応を目指し、データ資産の統一的な管理を可能にするカタログ機能の強化や、ScalarDBネイティブなセカンダリインデックスやビューなどの高度なクエリ機能の拡充を進めてまいります。これにより、企業全体のデータガバナンス強化とデータ活用の高度化を支援し、より多くの業務領域における導入促進と価値創出を実現します。
【ScalarDBについて】
詳細は以下を参照ください。
ScalarDB (GitHub): https://github.com/scalar-labs/scalardb
ScalarDB (ドキュメントサイト): https://scalardb.scalar-labs.com/docs/latest/
【株式会社Scalarについて】
株式会社Scalarは、「データマネジメントの未来を創る」をミッションとし、東京とサンフランシスコに拠点を持つ、2017年設立の日本発グローバルスタートアップです。複数・異種のデータベースを仮想的に統合し、トランザクションや分析問合せを実現するUniversal HTAP エンジン「ScalarDB」と、データの真正性の課題を解決するデータ改ざん検知ソフトウエア「ScalarDL」の開発・販売をしています。詳細はウェブサイトをご覧ください。
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<本リリースに関するお問い合わせ>
株式会社Scalar広報担当: press@scalar-labs.com



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